新劇場版 破 ヱヴァンゲリヲン    自分の力以上のもの            (10.第8使徒落下点での攻防 )


この内容は完全にネタバレになります。
映画をまだ見ていないという方は注意願います。


前回は、ゲンドウと冬月が不在の期間を狙いすましたかのように、爆弾と化した第8使徒が飛来、どうやって対処するかでミサトとリツコが対立、ミサトの強引な作戦が実行に移されるというところまででした。

今回は、エヴァンゲリヲン 新劇場版:破の10回目、第8の使徒の落下点での、シンジ・レイ・アスカの攻防からになります。

前回分をご覧になっていない方は、是非、ご覧ください。

【前回】新劇場版 破 ヱヴァンゲリヲン   三位一体            (9.第8使徒の落下 )

 エヴァ3体、第8使徒落下点へ急行

 胎内回帰

シンジ
「(エヴァの中… 何でだろう、こんな時なのに妙に落ち着く。もう乗ってるのが当たり前なのかな? 何でだろう、懐かしい感じがする。匂い?母さんの匂い? 綾波の匂い)」

 居心地のよさに違和感を感じる

シンジは、ミサトの無茶ぶりには慣れているとはいえ、命を落としかねない危険な任務に臨む自分が、妙に落ち着いていてある種の居心地のよさを感じています。
そして、それはエヴァ初号機という母の胎内にいて、母親に抱かれているからなのだということを知らないまでも、何か感じ取っている表現がされます。

鬼滅の刃の主人公の炭二郎もそうですが、匂いという感覚は本質をつく感覚として使われます。
これは実際の嗅覚だけでなく、本能的な感覚を総動員した結果として、危険な香りがする…とか、きな臭い匂いがする…などと、本質に迫る時の表現として、視覚や聴覚ではなく嗅覚が使われます。

母ユイとエヴァ初号機の関係、そして、母ユイとレイとの関係についても匂いとして感じ取っているのです。

しかし、同時に安心感や居心地のよさに、違和感を感じているところが面白いところです。
基本的に、この「破」という作品は、途中まで、妙に気持ちよく人間関係が修復・構築され、いかにもといったセリフが出ます。
あまりに上手くいきすぎる、順調すぎる感じが、すごく違和感を感じさせられます。
(もちろん、その後に悲劇が来るのは、エヴァであれば当然なのだという気持ちがあるからなのでしょうが…)

 使徒との戦い

ミサト
「おいでなすったわね。エヴァ全機スタート位置。2次的データが当てにならない以上、以降は現場各自の判断を優先します。エヴァとあなた達に全てを賭けるわ」

シゲル
「目標接近!距離およそ2万」

ミサト
「では、作戦開始、発進」

シゲル
「目標のA.T.フィールド変質、軌道が変わります」

ミサト
「くっ!」

シゲル
「落下予測地点、修正205」

マコト
「目標、さらに増殖」

アスカ
「何よ!計算より早いじゃない、ダメ!私じゃ間に合わない!」

シンジ
「こっちでなんとかする。ミサトさん!!」

ミサト
「緊急コース形成!605から675」

マコト
「はい!」

ミサト
「次っ!1072から1078スタンバイ!」

シゲル
「目標変形、距離1万2千」

シンジ
「A.T.フィールド全開!」

シンジ
「うわぁーーーぁーーー!くぅっ!」

アスカ
「七光り~!」

レイ
「2号機、コアを」

アスカ
「分かってるわよ! 私に命令しないで!」

アスカ
「とぉりゃあ~!うぁ!おりゃ!」

アスカ
「だぅっ!  外したっ!? ちょこまかと往生際が悪いわね!あと30秒」

シンジ
「アスカ、はやく…」

アスカ
「分かってるってば!……  エコヒイキ!?」

レイ
「くっ… 早く」

シンジ
「アスカ…」

アスカ
「わかってるっちゅ~の~!」

アスカ
「もういっちょお~~!」

シンジ
「はぁ…はぁ…はぁ…」

ミサト
「はぁ… ありがとう、みんな」

シゲル
「電波システム回復。碇司令から通信が入っています」

ミサト
「お繋ぎして…。 申し訳ありません、私の独断でエヴァ3体を破損、パイロットにも負傷を負わせてしまいました。責任は全て私にあります」

冬月
「構わん、目標殲滅に対しこの程度の被害はむしろ幸運と言える」

ゲンドウ
「ああ、よくやってくれた葛城一佐」

ミサト
「ありがとうございます」

ゲンドウ
「初号機のパイロットに繋いでくれ」

ミサト
「え?」

ゲンドウ
「話は聞いた。よくやったなシンジ」

シンジ
「え?…はい…」

ゲンドウ
「では葛城一佐、後の処理は任せる」

ミサト
「はい。エヴァ3機の回収急いで」

マヤ
「搬入は、初号機を優先、救急ケージへ」

アスカ
「私一人じゃ、何もできなかった」

 クラウチングスタートからの障害物競争

エヴァ3体が第8使徒の落下点を目指して猛ダッシュを開始します。
その動きと走り方は、とてもリアルで人間の様です。
電線なんかも、まるでハードルを飛び越えるように綺麗に飛び越え、また時には三段跳びの選手の様に全身を使って進んでいきます。
アニメとは思えない、とても見ごたえのあるシーンです。

「序」の時は、忍者の様に両手を後ろにして走っているシーンで、あまり人間的ではない動きでした、それに比べてモーションキャプチャーでとった動きの様に人間の動きならではと思えるような、体の軸の揺れがあったりしています。

しかし、最後はやはり忍者走りになっています。
いや、これはソニック走りというべきなのでしょう。
両手を後ろにして走りだした時に、ソニックブーム(衝撃波)が起こって車などをはじきとばしています。

 苦しむレイの姿

狙いが定められず苦しむアスカを助けるべく、レイの零号機がコアを両手でつかみますが、ものすごい熱さなのかレイが思わず「くっ!」と言葉が出るほど苦しみ、「早く」と促すことから、ギリギリの状態なのが伝わってきます。

ここで生きてくるのが、先の社会科見学のシーンで、熱いシャワーでも、冷たいシャワーでも、どんな滅菌処理をされても、全く無表情で微動だにしなかったレイが、ここまで苦しむとうことは、いかに熱いのかが、よりよく伝わるような作りになっています。

 指揮官としてのミサト 父としてのゲンドウ

結果として使徒を殲滅した上に、エヴァも一体はほぼ無傷、零号機、初号機も損傷はしたもののパイロットは無事な状態という見事な成果。

しかしながら、作戦が終わった瞬間出た言葉が「ありがとう、みんな」

こういった指揮官が、チームリーダーには必要ということでしょう…とても良いシーンなのですが、何か少し出来すぎ感を漂わせているようにも感じます。

そんな中、ゲンドウが初号機につないで、「話は聞いた。よくやったなシンジ」とさらなる出来すぎ感の助長。
「話は聞いた。よくやった」で終わるならまだしも、シンジという言葉を足しているので、明らかに父として子供に語っています。

さすがに違和感を感じ、この先が怖くなるシーンでした。


 自分の力以上のものの存在

停止したエヴァの中でうずくまりながら「私一人じゃ、何もできなかった」と振り返るアスカ、この言葉は、ミサトの「ありがとう、みんな」という言葉と対になっていて印象的です。

自分の力以上のものを期待しているミサト、そして、自分の力しか信じられないアスカの対比になっています。

アスカは、自分一人では対処出来なかった事にただ落ち込んでいるだけではなく、自分の力以上のものがあって生まれてくるもののすごさ、その見たことのなかった世界に驚き、そしてある意味では感動しているのだと思います。 

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【前回】新劇場版 破 ヱヴァンゲリヲン   三位一体            (9.第8使徒の落下 )


【次回】新劇場版 破 ヱヴァンゲリヲン    アスカの心の変化            (11.寝室~学校の昼休み )

 





 




  

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