「おとり作戦」「おとり捜査」など、『おとり』という言葉は普段の生活の中では、あまり使う言葉ではないかもしれませんが、戦争や刑事物の小説、ドラマなどでは、よく耳にする言葉です。
しかし、そもそも『おとり』って一体何もの?
「おとり」の「とり」は、鳥? それとも取り?
当たり前に使っているけど、実はナゾのおとり…
今回は、そんな、おとりの由来について見ていきたいと思います。
おとりの意味
とりあえず、おとりの意味を確認しましょう。
おとり【囮】
①他の鳥獣を誘い寄せ、捕らえるために使う鳥獣[ーーを使って生け捕る]②人を誘い寄せるために使うものや人[ーー商品]
【出典:旺文社 国語辞典】
おとりは漢字で書くと 『 囮 』
部首は「くにがまえ」そして「化ける」という字、難しい字ですね。
その意味はというと… 鳥や獣を誘い寄せるための、同じく鳥や獣…
どうやら、おとりのとりは、鳥が由来の様ですね。
様々な辞典類を調べまくったところ、「おとり」は、囮以外に、媒鳥という漢字があるようで、「おとり」以外にも「ばいちょう」という読み方もできるようです。
それでは、いよいよ、おとりの由来について見ていきましょう。
おとりの由来
実は、色々調べてみたのですが、はっきりとした由来は分かっていないようです。
しかしながら、有力のな説は、次のとおりです。
鳥をつかまえるために、鳥を招くための鳥を置いたことから、招き鳥(おきどり)と呼ばれ、それがいつの間にか省略されて、「おとり」になったというのが有力な説です。
囮(おとり)の鳥のことを、英語でDecoy(デコイ)と呼んでいる、木製の鳥です。
カモのデコイなどが多いですが、インテリアとしても欧米では一般的です。
さて、では、このデコイ(おとり)を使って、どの様に鳥を捕まえるのか、おとりでも最も一般的なカモ猟を例に見てみましょう。
鴨(カモ)のおとり – デコイ猟
このカモのおとり(デコイ)は、1個で使うことは、ほとんどありません。大体、10個以上を用意して、そして湖や池に浮かべます。
多くのカモが、あたかも安全な場所で羽を休めているように見えるからで、そうすることによって、本物のカモがおびきよせられてきます。
実際の猟には、おとり(デコイ)だけでなく、カモ笛(ダックコール)と呼ばれるカモの声を擬態できる笛を使います。
しかも、この笛も一つでは不自然なので、潜んでいる複数の人達で、何種類もの声を擬態して、よりリアルに見えるようにしていきます。
そして、カモが飛来してきたところを、狙い撃ちしていく狩猟のスタイルです。
このおとり(デコイ)には、もちろんカモ以外にも、鳩や様々な鳥がありますし、ジビエ猟と呼ばれる、鹿などのおとり(デコイ)も存在しています。
遠目には、本物と区別がつかない位、リアルに作られています。
最期に、「おとり」という言葉が、小説や身近なところで、どの様な使われ方をしているのかを見ていきましょう。
『おとり』という言葉の使われ方
戦争ものの話では、よく「おとり部隊」というのが出てきます。
これは、敵の目をひきつけさせるためのもので、本隊ではありません。
敵の主力部隊を、おとり部隊に引き付けさせることで、味方が攻撃しやすいように仕向けるためのものです。
ガンダム(ファースト)では、主人公達が乗っているホワイトベースは、ジオンをあざむくため『おとり』として行動していました。
それ以外にも、これはマーケティングで行われる手法で、「おとり効果」というものがあります。
これは、例えば下記の様に、携帯電話の会社のサービスで、アルファ社のAプランというサービスに対して、ベータ社のXプランというサービスが競合関係にあるとします。
アルファ社は、なんとかしてAプランでお客さんを取り込んでいきたいと考えていますが、そのために、あえてBプランという似たようなサービスを出します。
費用 | 使用可能な通信料 | |
アルファ社 |
3,000円 | 30ギガバイト |
アルファ社 |
2,500円 | 25ギガバイト |
ベータ社 |
2,000円 | 20ギガバイト |
AプランとBプランを比較すると、Bプランは費用はおろか、使用可能な通信量(ギガバイト)でも、Aプランより劣っているため、これを選択する人は、まずいないでしょう。
つまり、Aプランは、Bプランに対して、『費用』『通信量』の2つとも勝っている(2勝0敗)ということになります。
でも、それって何か意味があるの??
と思うかもしれません。
実は、これが『おとり効果』で、一見、無価値の様に思えるアルファ社のBプランと、ベータ社のXプランを比較すると、Xプランは、Bプランよりも費用が安いだけで、使用可能な『通信量』は低いということになります。
つまり、アルファ社のBプランと、ベータ社のXプランを比較すると、『費用』と『通信料』で(1勝1敗)の結果になります。
もしも、Bプランという『おとり』を出さなければ、お互い費用と通信量の1勝1敗だったはずが、この『おとり効果』によって、アルファ社のAプランを契約する、お客さんが増えることになります。
ちなみに、ベータ社のXプランを、おとり効果を使って購入者を増やしたい場合には、例えば、料金設定は2,500円で、15ギガバイトのサービスを提供すればよいことになります。
もちろん、『おとり』については、これ以外にも、冒頭でもあげた「おとり作戦」や「おとり捜査」などがあります。
でも、その全てが、おとりを使って何かを得る、成し遂げるといった意味になります。
まとめ
招き鳥(おきどり)の省略
※有力な説
おとりの使われ方
- おとり部隊 (戦争などにおける敵を引き付ける目的)
- おとり効果 (マーケティングの手法)
などなど・・・
おとりを使って、自分の得たい物を得るという意味で使用される。
あとがき
仕事で、イギリスの取引先とのやりとりで、よくお土産として渡されるのが、カモのデコイでした。
実によく出来ていて、確かに美術品として素敵だから、しばらく部屋に飾っていました。
でも、今思えば「サンキューサンキュー!」と、笑顔で喜んでいた自分は、まんまと取引先の「おとり」に踊らされていたのではないのか…(苦笑)
今回の、おとりに限らず、由来やルーツを探るのって楽しいですよね。
文献などが残っていなくて、はっきりとしたことが分からない場合には、自説なんかを考えてみると、楽しいですよね。
ただ、単に知識を得るだけでなく、楽しく、そして豊かに色んなことを感じたり、考えたり出来るようになりたいなと思っているんですけどね…これが、なかなか(笑)
コメント