ルネサンスの絵画とは?ボッティチェリ 『プリマヴェーラ(春)』ギリシャ神話の詰め合わせ?

ギリシャ神話・哲学


今回は、ルネサンスの絵画の第5弾で、再度ボッティチェリについてとりあげます。

前回は、『ヴィーナス登場』ならぬ『ヴィーナス誕生』についてとりあげましたが、今回は、ボッティチェリのもう一つの名画プリマヴェーラ(春)についてとりあげたいと思います。

この絵画は、『ヴィーナス誕生』の様にシンプルではなく、登場する神々も多いため、少し理解が難しいのかもしれません。
また、背景が割と黒い色で書かれているため、プリマヴェーラ(春)というタイトルにしては、少し暗いイメージがある絵画なのだと思います。

しかしながら、そんな絵画も、ちゃんと見ていくと、この絵画の意図が見えてきて、とても興味深いものになります。

今回は、そんなボッティチェリの春(プリマヴェーラ)について、見ていきたいと思います。

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 ボッティチェリ作「プリマヴェーラ(春)」

早速、ボッティチェリ作、春(プリマヴェーラ)についてみていきましょう。



登場人物が多くて、少し困惑するかもしれません。
でも、その一人一人を、ちゃんと理解することで、この絵画の意味するところが、グッと理解することができますので、まずは、一人ずつ誰で何を意味しているのかをひも解いていきましょう。

まず右端から、青い体で、ほおを膨らませている、まるで二日酔いのちょっとやばそうな男性が描かれていますが、これは、西風の神ゼフィロスです。

そして、その彼が後ろから、つかまえているのが、ニンフ(精霊)であるクロリス、クロリスは、神であるゼフィロスと結ばれることで、花の神フローラになっていくのです。


この二人は夫婦で、ヴィーナス誕生でも、二人で描かれています。

そして、これが面白いところなのですが、花の女神フローラとして自立した姿が、そのクロリスの左隣りに描かれています。

まさに、この西風が吹いて、春の花をもたらすという姿が、「春」プリマヴェーラという題材を最もよく表している姿ということが言えます。

花の女神フローラは威厳ある姿で、ある意味最も堂々と描かれています。
そして、この女神フローラは、春の女神プリマヴェーラで、この絵画の題名ということになります。

その横、この絵画で、中心に描かれているのが、ギリシャ神話の愛と美の女神アフロディテ、ローマ神話名でいうヴィーナスになります。

その上を飛ぶのは、いつもヴィーナスと一緒にいる、キューピッド(エロス)で、恋の弓矢をつがえています。

中心のヴィーナスの左側にいる三人の女性は、三美神で、左から「愛欲」「貞潔」「美」となります。

この絵を見てもらうと、左側の「魅力」の女神と、中央の「美貌」の女神は、お互いに見合っています。
つまり、魅力と美貌の女神は互いに、対立しているのですが、それを、右端の想像力の女神が上手く取り持つ形で、三美神としての統一を保っているという事を意味しています。

そして、最後、左端には神の伝令係的な役割を担う、ヘルメス(マーキュリー)がいます。

一体、ヘルメスは何をしているのでしょうか?

これは、頭上の霧を杖で払っていると言われています。
神々の使いとして、人間界との行き来をしているヘルメスをここに描くことで、神々の国の春の訪れを、人間の世界にも伝える、そんな役割としてヘルメスを描いているのではないかと言われています。

さて、この登場人物(神々)の中で、キューピッドが実は目隠しをしている問うことにお気づきでしょうか?

キューピッドは、弓に矢をつがえて、今にもそれを放とうとしていますが、目隠しをされています。

その弓の先は、どうみても三美神のうち、真ん中の「貞潔」につがえています。

これが、どういう意味を持つのか?
研究者の中でも意見が大きく分かれるところなのですが、キューピッドの矢に打たれると、自制心を失いただひたすらに愛を求めて行動するというのは、ギリシャ神話の中でよく描かれているところです。

普通は、愛欲と貞潔は見合っているように、常に対立している関係にあるのですが、この「春」の訪ればかりは、キューピッドもその自身の行いに目をつむり、貞潔を愛の矢で射貫くことで、心をただただ愛に目覚めていく、それを春の象徴として描いているのではないでしょうか?

愛と美の女神に、この花の女神フローラが描かれているということは、春という季節が愛というものと強く関連づけられて表現されています。

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まとめ

Checkルネサンスの絵画
ボッティチェリ(春‐プリマヴェーラ)

allowrd_r1 春(プリマヴェーラ) 絵の構成(右より)

  • 西風の神 ゼフィロス
  • ニンフ(精霊) クロリス → 花の女神フローラ
  • 愛と美の女神ヴィーナス
  • キュービッド
  • 三美神(愛欲、貞潔、愛)
  • ヘルメス

allowrd_g1 絵画の意味するところ
西風によって花の神フローラが生まれ、そしてそれが、ヴィーナス、  キューピッドによって、愛というものになって、ヘルメスにより神々の世界から人間の世界に伝えらていく。
春という言葉は、愛というものに置き換えられて、愛の讃歌としての意味がこめられていると思われる。

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 あとがき

この絵は、意味を理解するという意味では、とても難しい絵画なのだと思います。

ただ、ギリシャ神話は、神々の愛憎劇を、まるで実在の人間界にあるものの様に描いています。

つまり、この絵で描いている愛というものは、キリスト教の愛ではなく、あくまで人間界の愛を描いているのは自明です。

そして、今まで、そんな人間界と愛を結びつけるような絵画は皆無といっていいでしょう。

まさに、このルネサンスにおいて、そんな人間界の生き生きとした愛の讃歌を、ギリシャ神話を通して生き生きと伝えている、絵画なのだと思います。

そういう意味では、とても人間を感じさせる絵画なのではないかと思います。












 

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