『グランド・ジャッド島の日曜日の午後』この絵画、まず題名が長いですよね。
以前、テレビのクイズの問題で見たことがあります(笑)
この絵画、教科書や何かで、一度は目にしたことがある絵なのではないかと思います。
ひたすら細かい点、点、点、点、点…
そう、強烈な点描(てんびょう)表現で有名なこの絵。
綺麗で柔らかい印象が素敵な絵という人もいる一方で、ここにいる人達に生気を感じない… など、様々な意見があり、好き嫌いがはっきりと分かれる、そんな絵でもありますよね。
今回は、そんな『グランド・ジャッド島の日曜日の午後』について、お届けしたいと思います。
ジョルジュ・スーラ(Georges Seurat)
さて、まずは誰が描いたものなのか、作者(画家)の簡単なプロフィールから、ご紹介します。
端正な顔立ちですよね。
写真なのでなんとも言えませんが、真面目そうな印象を受けます。
スーラはエコール・デ・ボザールというフランスの国立の高等美術学校の入学し絵を学びます。
但し、兵役のためもあり一年間しか在籍できませんでした。
その後、1883年に素描で、サロンに入選すると、同年「アニエールの水浴」に着手。
この絵ですでに、部分的に点描を取り入れています。
そして、翌年の1884年 「グランドジャッド島の日曜日の午後」を描き始めます。
残念ながら、31歳という若さで亡くなっています。
スーラの絵画の特徴(新印象派)
セザンヌやルノアール、モネといった、いわゆる印象派(印象主義)に続く画家としてフランスで活躍しました。
印象派は、明るい外光を絵画に取り入れるため、色を混ぜずに、なるべく原色のまま筆を置いていく筆触分割(ひっしょくぶんかつ)の技法を使ったが、スーラは、それを更につきつめて、ひたすら色の点(ドット)を描いて絵画を表現していく、点描(てんびょう)を使って描きました。
この点描の技法は、新印象派(点描主義)という新たなムーブメントとなり、スーラ以外にも、ポール・シニャックや、カミーユ・ピサロなど多くの画家たちが点描を使った絵画を描いています。
印象派の人達は、外の日の光を絵画の中に表現するために、明るさを重視しました。
そのため、従来の顔料を混ぜるということをせずに、なるべく原色のままを使って描いていき、近くで見ると何を描いているのか分からなくても、少し離れると、その色が目の中でまざって光を帯びた物体が表現されるように描く技法。
モネの絵画など見ると、その特徴がよ~く分かります。
『ラ・グルヌイエール』1869年 モネ作
この時代(19世紀)になると、科学の光学、色彩学の分野が、一気に発展します。
スーラはその当時最先端だった、その光学理論の考えも取り入れて、あらゆる対象物に対して光学的な原色に分解して、それを補色と対比させた点を並べて表現していくというもの。
ちょっと誤解があるかもしれませんが、究極的には、やろうとしていたことは、今のカラープリンター (ドットマトリックス方式)なんだと思います。
さて、この絵画の舞台となっているのは、絵のタイトルにもついている、グランド・ジャッド島。
これが、どんな場所なのか、気になりませんか?
次に、絵画が描かれた場所についても、調べていきたいと思います。
グランド・ジャッド島とは?
グランド・ジャッド島は、パリの郊外にあるオー=ド=セーヌ県にあります。
セーヌ川の中州になっている島が、グランド・ジャッド島です。
ノートルダム寺院も、シテ島という、同じくセーヌ川の中州にある島に建っています。
セーヌ川には、それ以外にも、サン=ルイ島、白鳥の島、サン=ジェルマン島、セガン島、ピュトー島といった多くの島があります。
セーヌ川は、パリの街を極端に蛇行して通っているので、橋が多くあり、このあたりが、パリの街を素敵に、そして面白くしている要素だと言えるでしょう。
この地図の左上の矢印の場所が、グランド・ジャッド島です。
エトワール凱旋門まで約3㎞ 、エッフェル塔までだと約5.5㎞といった場所にあります。
中州というと小さいイメージがありますが、実は、この島は住宅街で約4,000人もの人が住んでいるそうです。
さて、そんなグランド・ジャッド島ですが、今は住宅街となっていますが、スーラがこの絵を描いたのは19世紀当時は?というと、パリから離れた田園地帯だったそうです。
モネや、ゴッホ、シスレーといった多くの画家たちが、このグランド・ジャッド島に来て絵を描いていたようです。
パリの近くにあって、すぐに行ける、自然を描くのにはいい田園地帯といったところなんでしょうね。
スーラは、この島にある公園に通い、なんと、2年間もかけてこの大作を仕上げています。
そして、この絵、実は大きい絵なんです。
グランド・ジャッド島の日曜日の午後に描かれたものとは?
この絵は、油絵でキャンバスに描かれているのですが、その大きさ、なんと 約207 × 308 (cm)!!
さて、そこに描かれている人々。
この絵が、嫌いな人がいう通り、全員、無表情です。
まず、ここに描かれているのは、グランド・ジャッド島の中にあった公園です。
日曜日に、パリ近郊のこの場所に、家族や恋人、友人といった気のおけない人達とピクニックに来ることが、当時の流行だったようです。
そんな、当時の流行風俗の情景を描こうとした作品だったんですね。
実は、最も明るい黄色っぽい色の芝生の部分は、描いてすぐに退色がみられ始め、現在では描いた当時より少し茶色っぽくなってしまっているようです。
あとがき
「アニエールの水浴」ロンドン・ナショナルギャラリー所蔵 も、この「グランド・ジャッド島の日曜日の午後」シカゴ美術館所蔵 も実物を見たことがあります。
やはり、グランド・ジャッド島の日曜日の午後の印象は強烈でした。
実は、大きさを知らなかったので、目の前に現れた時、一瞬現代の作家さんが模写したものかと思いました(笑)
特別な部屋に飾ってあり、絵のすぐ近くまで寄って見れるようにしてあり、また、かなり離れた位置からも鑑賞できるようにしてあるので、この点描表現の持つ意味が、よくわかる素晴らしい展示方法でした。
この絵はもともと、そんなに好きではなかったんです。
なんか、人の表情が読み取れなくて、なんか仮面をかぶっているような印象があったんですよ。
でも、実物を見ると、まるで砂絵の様な点描表現が、絵画全体を柔らかい印象に包み込んでいて、かえって人物の表情にとらわれないので感情移入することなく、常に全体を俯瞰して楽しめる、そんな普遍性の高い絵画だと感心したことを思い出します。
素晴らしい展示方法だと、一生懸命英語で美術館のスタッフに伝えたのですが、ハイハイ…と簡単にあしらわれたのも思い出します(笑)
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