この内容は完全にネタバレになります。
映画をまだ見ていないという方は注意願います。
前回は、アスカの乗るエヴァ3号機(第9使徒)をダミープラグを使って倒したことに怒ったシンジが、ネルフ本部を攻撃するも、L.C.L.濃度を上げられることで意識を失い、心象風景(電車)から目覚めると、いつもの病院のベッドの上というシーンまででした。
今回は、救出されたアスカ、しかし使徒の汚染があり厳重に隔離されているシーン、そして、エヴァには乗らないというシンジに、ゲンドウがネルフを去るように伝えるシーンです。
前回分をご覧になっていない方は、是非、ご覧ください。【前回】新劇場版 破 ヱヴァンゲリヲン シンジの暴走 そして絶望 (20.不条理と若者の暴走 )
アスカの救出、エヴァ搭乗拒否のシンジ
救出されるアスカ
「細胞組織の侵食跡は消えたものの、使徒による精神汚染の可能性も否定できない。このまま隔離するしかないわね」
マヤ
「まさか、処置ってことはないですよね」
リツコ
「貴重なサンプル体よ。ありえないわ」
リツコはサイコパスか?
リツコは、科学者として合理的な判断を下すことが多く、時に非情に思えることがある。
はたして、リツコはサイコパスなのか?
しかしながら、外見は魅力的な言動、行動をとることが多く、社交的な性格を見せる人達もいるとされる。
処置を気にするマヤに対して、「貴重なサンプル体」という返答をするリツコ。
つまり、アスカを調査をするための「サンプル体=検体」としてしかみていないという、ちょっと冷酷に思えるような表現をします。
このあたり、優秀なサイコパス気質の科学者にあるような、感情に流されず冷徹とも言える雰囲気を出しているとも思えます。
ただし、その後のシーンで、異常ともいえるタバコの吸い殻、口紅の跡がついていることから、それが全てリツコのものだということがわかります。
タバコが手放せない愛煙家のリツコですが、それでも、体重の増加を気にしたり、レイの身体検査をしたりと医学にも通じていそうなリツコが、ここまでタバコを吸っているというのは、ちょっと異常ともいえる状況です。
吸っていたタバコを、吸い殻の中に突っ込むところなども、あまり丁寧とはいえない仕草で、明らかにいらだちを持っていることがわかります。
このあたり、内心はアスカの無事を祈り、不安と心配で、いらだつリツコの姿が浮かび上がるシーンとして描いているのだと思います。つまり、リツコは、時に科学者として感情を抑え込むことはあっても、サイコパスではないのでしょう。
貴重なサンプル体という言葉は、リツコ自身が思っている言葉ではなく、冷静にこの状況を判断して、ネルフやSeele(ゼーレ)、その他政府などの組織が、使徒に浸食されたという、この貴重な検体(サンプル体)を検査もせずに処分してしまうことは絶対にないというリツコの考えです。
ゲンドウと対面するシンジ
ゲンドウ
「命令違反、エヴァの私的占有、稚拙な恫喝。これらはすべて犯罪行為だ、何か言いたいことはあるか」
シンジ
「はい、僕はもうエヴァには乗りたくありません」
ゲンドウ
「そうか、ならば出て行け」
ゲンドウ
「また逃げ出すのか? 自分の願望はあらゆる犠牲を払い、自分の力で実現させるものだ。他人から与えられるものではない。シンジ、大人になれ」
シンジ
「僕には、何が大人か分かりません」
ゲンドウ
「私だ、第3の少年は抹消。以後初号機の運用はダミーシステムを基幹とする、バックアップは不要だ」
「レイ、シンジ君を引き止めなかったですね」
マコト
「最近変わってきたから期待してたんだけどな~。あの子達の距離感計りかねるよ」
シゲル
「しかし、これでまたパイロットは一人きりだ」
マヤ
「振り出しに戻る…ですね」
厳重な手錠
確かに軍の最高機密の最大の武器を私的目的で使用したのだから、重大な犯罪行為として捉えられるのでしょう。
しかし、それにしても3連の手錠というのは、すごいですよね(笑)
しかも、NERVと記載されているので、警察ではなく、ネルフは自分たちで手錠も持っているということですよね。
ネルフの諜報部員というのは、旧ソ連のKGB、アメリカのCIAなどと同じ様な組織だということなのでしょう。
しかし、犯罪といいながら、エヴァに乗らないといったところ、「ならば出ていけ」というあっけない一言で終わってしまいます。
少年院等に入ると言ったほどの問題ではないということなのでしょうか?
ネルフ本部を攻撃したのであれば、人類の存続にかかわる問題として結構重罪な気もしますが…
目が死んでいないシンジ
今回の事件で、シンジは完全に失望・絶望して、抜け殻の様になって、エヴァにはもう乗らないと言っているのではないということが、ゲンドウの「また逃げ出すのか」というセリフを聞いた時の表情で分かります。
明らかに、悔し気な戦う人間の表情をしています。
つまり、心が折れてしまったというのではありません。
もちろん、逃げ出した訳でもありません。
この納得のいかなさ、不条理な仕打ちに対して、あくまで戦い、反抗心で行っている行動だということが分かります。
この辺りは、以前は怖さから逃げだして、死んだような眼をしていた時とは大きく違うところです。
これまでの「破」の流れを思い起こさせる
マヤ、マコト、シゲルの三人のやりとりから、この映画「破」が最初は、ほのぼのと、そしてぽかぽかと流れていたことを思い出させられます。
この事件が起きたことで、一気に、そのほのぼのやぽかぽかが崩れてしまった事をちょっと振り返ることの時間として、このシーンが効果的に挿し込まれているように思えます。
ただ、ウォークマンを拾い上げるレイの表情には、サイコパス的なもとのレイにもどってしまったのではなく、一度、発動した母性の様なものはしっかりと残っていて、元に戻っているのではないということが伝わってきます。
【前回】新劇場版 破 ヱヴァンゲリヲン シンジの暴走 そして絶望 (20.不条理と若者の暴走 )

【次回】新劇場版 破 ヱヴァンゲリヲン 家を出るシンジ、使徒出現 (22.それぞれの出撃)
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