この内容は完全にネタバレになります。
映画をまだ見ていないという方は注意願います。
前回は、ミサトの家に居候することとなったシンジが、夜、いつものウォークマンを聞きながら寝るところまででした。
ヱヴァンゲリヲン 新劇場版 序 しっかり見直してみると、そこには…(5.ミサトの家~学校~エヴァ訓練)
今回は、新たな使徒(第5の使徒)の登場と、そして、シンジの家出のシーンで気になった所を見ていきたいと思います。
といっても、使徒との戦いのシーンについては、特に気が付いたこともないのですが・・・
使徒出現、シンジ出撃、そして避難所のシーン
「移動物体を光学で捕捉」
「分析パターン青。間違いなく第5の使徒よ」
「総員、第一種戦闘配置!」
「政府、及び関係各省への通達終了」
「非戦闘員及び民間人は?」
「既に、退避完了との報告が入っています」
「うう、まただ!」
トウジ
「また文字だけなんか?」
ケンスケ
「報道管制って奴だよ。僕ら民間人には見せてくれないんだ、こんなビッグイベントだっていうのに!」
壁にはわせているパイプの角度
しかし、直線を曲げるということが、庵野監督の心をくすぐる何かが、そこにあるようにも思えてなりません。
言われた通りにするシンジ・勝手に行動するシンジ
マヤ
「A.T.フィールドを展開」
「目標をセンターに入れてスイッチ・・・目標をセンターに入れてスイッチ」
「作戦通り。いいわね、シンジ君?」
「はい」
「馬鹿!爆煙で敵が見えない!」
「はあ、はあ」
目標をセンターに入れてスイッチ
「目標をセンターに入れてスイッチ・・・」シンジが射撃訓練の時から、無表情にお経の様に唱え続けている、この言葉。シンジは、言われたことだけやればいいという行動で、集中というよりは、完全に思考停止に陥っています。
もっとも、大人であっても現代の我々は、失敗を恐れるあまり、言われたことだけをやっていればよい、マニュアル通りにやっていればよい、といった思考停止に陥っているとも言えます。
「今よ、後退して!回収ルートは34番、山の東側に後退して!」
「転校生、逃げろ言うとるで!転校生!!」
「逃げちゃ駄目だ・・・逃げちゃ駄目だ・・・逃げちゃ駄目だっ!」
「プログレッシブナイフ、装備!」
「シンジ君、命令を聞きなさい!退却よ!シンジ君!」
「うわあ~!」
「あの馬鹿」
「うわあ~!」
「初号機、活動限界まであと30秒!28、27、26、25、24、23、22」
「13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1・・・エヴァ初号機、活動停止」
シゲル
「目標は完全に形象崩壊しました」
逃げることを恐れるシンジ
言われた通りにやっても上手くいかない。更には、トウジとケンスケが戦いの場にいるという思いもしない状態になって、完全にパニックに。
「逃げる」という事が、自分の中で禁止ワードになっているかの様なトラウマで、逃げろと言われても逃げずに、我を忘れてプログレッシブナイフで戦うシンジ。
まるで躁鬱 の様に、落ち込んだり暴走したりする不安定な思春期の少年の心を描いているシーンでもあります。
ミサト
「帰らないつもりね。あのバカ」
「碇、碇シンジ。なんだ、転入早々もう休みか・・・まあいい、では、先日のテストを返す」
生徒達
「ええ~」
「いいですよ、もう。ミサトさんのところに連れてってください!」
シンジの逃避行(家出)は確信犯?
時間の経過を様々なアイテムで伝える
電車に乗ってシンジが家出をするシーンです。ただ、クラッシックやフォーク、ロックではなく、1980年代J-POP系の様な、ちょっと軽快な音楽です。
行く宛も無く、ひたすらに電車に乗っているシーン。
時間の経過を、人々の移動で表現していますが、最初は、学校帰りの学生、そして通勤帰りの時間帯で会社員、様々な人々が乗って混み合っている状態から、恐らく塾帰りの学生、子連れの主婦、最後はずっと一緒に乗っていて居眠りをしていたおじさんと、どんどん人が減り、そして、雨傘による水たまりの乾き具合などからも、時間の経過が感じられるようになっています。
シンジのウォークマンのバッテリーも減っていて、恐らく最後はバッテリー切れで耳栓替わりにイヤホンをしていただけなのでしょう。
防犯カメラ?監視カメラ?
NERV(ネルフ)のエヴァのパイロット、大人はシンクロ出来ず、子供にしか(しかも思春期限定?)搭乗することが出来ません。つまり、子供であっても超がつく重要な存在。
従って、必ず護衛(監視)がついているのはシンジも分かっています。
さて、このNERV(ネルフ)の護衛を監視カメラととらえると、とてもイヤなものとして感じてしまいますが、防犯カメラとして考えれば、何か問題が起こったとしても助けてもらえる、という安心感につながります。
シンジにとって、NERV(ネルフ)の護衛は、監視カメラであり、かつ防犯カメラにも感じているのでしょう。
この家出(逃避行動)は、それが分かっているからこその行動だったのだと感じさせます。
暗い夜道で、道路が壊れていて、いよいよ先に進めなくなると途端に降参。シンジにとっては、監視カメラの存在として「いいですよ」という言い方をしていますが、実は、心の中では防犯カメラとしてとらえていることが、次のミサトとのシーンで分かります。

シンジの帰還、ミサトとの対話のシーン
「歩いてまわって気は済んだ?碇シンジ君」
シンジ
「別に、どうでもよくなりました、何もかも・・・僕に自由なんて無いんだ、どうせ僕はエヴァに乗るしかないんですよね。そのためだけに父さんに呼ばれたんだから。いいですよ、乗りますよ、それでみんながいいんだったら、僕はいいですよ」
ミサト
「みんなって、あなたはどうなの?」
シンジ
「僕には無理だってことはわかってるんですよ。みんなも分かってるんだきっと、それでも怪我した綾波や、ミサトさんや父さんが」
ミサト
「いい加減にしなさい!人のことなんか関係ないでしょ!? エヴァのパイロットを続けるかどうか、あなた自身が決めなさい。嫌ならここを出て行ってもいい、全てあなたの自由よ。好きにすればいいわ」
防犯カメラのない世界(守られていない真の自由)
大人たち、NERV(ネルフ)から行動を束縛され、エヴァに乗るしかない状況に追い込まれる。そんな監視カメラとしての状況を強く訴えているシンジに対して、真の自由をつきつけるミサト。
それは、シンジにとって、実は防犯カメラ的な守られている部分を完全に取り払われることでもありました。
大人から真の自由を与えられ、自分の責任で全て選択をしていかなければならないことほど、実は恐ろしいことはないということに気づかされるシーンです。
それを知ることが、大人への一歩だということをミサトは分かりやすくさとしているとも言えるでしょう。
「結局、お前の息子は予定通りの行動をとったな」
ゲンドウ
「ああ、次はもう少しレイに接近させる、計画に変更は無い」
冬月
「14年前からのシナリオ。運命を仕組まれた子供達か・・・過酷過ぎるな」
NERV(ネルフ) ゲンドウの部屋の天井と床の模様
ゲンドウの部屋の天井と床には、模様が描かれています。
その、それぞれの絵柄について見ていきましょう。
天井の模様:生命の樹(セフィロトの樹)
旧約聖書の創世記に記載があり、エデンの園の中心に植えられている樹。
聖書の中ではアダムとエヴァ(イヴ)は、知恵の樹に実る『知恵の実』を食べたが、生命の樹になる『生命の実』は食べていない。
エヴァの世界では使徒が生命の実を食べた者として描かれています。

床の模様:天使の階層
Robert Fludd ” Utriusque Cosmi Historia”(ロバート・フラッド「両宇宙誌」
地球(Terra)を中心にして、その周りを回る星々(つまり天動説))を表している図の様ですが、1番目は名前がつぶれてよく見えませんが、2.Seraphin (熾天使 してんし) 3.Cherubin(智天使 ちてんし)4.Dominationes (主天使 しゅてんし)…と天使で始まります。また、12. Saturnus (土星)以降は、惑星や衛星なども入ってきます。
ちなみに、右に書かれている記号の様なものは、ヘブライ語の数字(1から順に、アレフ、ベート、ギメル、ダレット…)
ロバート・フラッドの両宇宙誌という本を読んだことが無いので、この図がどういうものか、よく分かりません。

従って三相3線式が採用されています。


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