この内容は完全にネタバレになります。
映画をまだ見ていないという方は注意願います。
シン・エヴァンゲリオン:|| の公開によって、テレビ版から25年間に渡って続けられてきたエヴァンゲリオンシリーズが、終わりを迎えました。
ラストとなる映画シン・エヴァンゲリオン:|| を鑑賞しました。またNHKで4年間に渡る庵野秀明総監督についてのドキュメンタリーを見ました。
そして、改めて新劇場版を序から振り返ってみたところ、今まで気づかなかった部分や、色々と感じるところがあり、今回それらをブログに残すことにしてみました。
セリフを中心に、それぞれの場面(シーン)について、自分が感じたこと、あるいは疑問に思ったこと、また散りばめられている様々なモチーフ(キリスト教の正典あるいは外典の言葉など)についても、分かる範囲で載せていきたいと思います。
ページコンテンツ(目次)
そもそも、エヴァンゲリオンとは何なのか?
本編に入る前に、最初にエヴァンゲリオン(EVANGELION)とは一体何なのか?について触れておきたいと思います。
この言葉自体は、”福音”という意味で、福音とは「神からの救済、良い知らせ」という意味がありますが、旧約聖書に記載されているアダムとエヴァ(イヴ)のエヴァという要素が強いようです。
使徒の襲来 ミサトの迎えを待つシンジとNERV(ネルフ)本部のシーン
「あ、だめか。携帯も圏外のままだしバスも電車も止まったままだし。 待ち合わせは無理か、しょうがない、シェルターに行こう… ん?」
このシーンは、主人公のシンジの初登場のシーンであり、そして、綾波レイという不思議な少女が登場するシーンでもあります。
綾波は白い鳩とセットで表現されています。白い鳩の群れが飛び立ち、そして、たたずむ綾波レイが映ります。
街中にあれだけ(13羽)の白鳩がいること自体が、よくよく考えると不自然な状況ですよね。綾波レイのプラグスーツは白なので、白が綾波レイのイメージカラーであることは明らかです。
従って、白い鳩というモチーフも、いかにも何か関係がありそうではあります。
13羽という数も後々のストーリー展開(倒さなければならない使徒の数)と一致していて意味深です。
宗教画に描かれる鳩は目に見えない聖霊を可視化しているものとして、よく使われているアトリビュート(関連付けられたシンボル)の一つです。
冬月
「やはりA.T.フィールドか」
「ああ、使徒に対し通常兵器では役に立たんよ」
使徒とは一体何者なのか?
使徒は、リリスと融合することで「完全な生命体」に昇華します、しかし、そうなると、人間を含めた他の生命体は滅ぶという設定。
人間を襲う、人類に敵対する生命体には、全くそぐわない感じがするネーミングになっています。
キリスト教の12使徒は、新約聖書の使徒言行録によると、12使徒の中でイスカリオテのユダがイエスを裏切ったため、その欠員を後にマティアが埋めたことになっています (つまりトータルでは13人)
エヴァンゲリヲンに登場する使徒が13体というのも、意図的な一致の様な気もします。
敵の様な存在として登場させておきながら、その実は人類の救済に必要な存在か?と思わせるネーミングになっています。
国連軍の切り札N2地雷による攻撃、車ごと飛ばされてしまうミサトとシンジのシーン
「ちょっとまさか!? N2地雷を使うわけ?… 伏 せて!」
「大丈夫だった?」
「ええ、口の中がシャリシャリしますけど」
「そいつは結構、それじゃ、いくわよぉ!せ~の!」
「ふぅ、どうもありがと。助かったわ」
「いえ、僕のほうこそ。葛城 さん」
「ミサトでいいわよ。改めてよろしくね 、碇 シンジ君」
「はい」
N2地雷とは?
これは、実在しない架空の兵器です。その名前のとおり窒素(N2)を使った爆弾(地雷)で、原子爆弾よりも強力と言われていて、1950年代に旧ソビエトがN2爆弾の開発に成功したとして、当時旧ソビエトと冷戦状態にあったアメリカでは大騒ぎとなりました。
しかし、実際には開発されておらず、N2爆弾は存在していませんでした。
ボロボロとなった車でNERV(ネルフ)本部へ向かうミサトとシンジのシーン
「ルノーが動いてくれてよかったあ~、ローンがまだ12回も残ってんのに、いきなり廃車じゃシャレになんないもんね。直通の特急列車も頼んだし、これで予定時間守れるかも」
「何も聞かないのねシンジ君?」
「ん、はい」
「さっきから私ばっか話してるんだけど」
「ん、すみません」
「謝ることはないけど、ただ、さっきのでかいのは何ですか?何が起こってるんですか?とか、聞きそうなもんじゃない」
「いや、あの、聞いても何も答えてくれないだろうと思って」
「妙に気を回して決めつけるのね、子供らしくないわよ」
「いいんです、先生に言われた通りにしているだけですから」
「そう・・・ま、いいわ。ちなみにさっきのは、使徒と呼ばれる謎の生命体よ」
作者の遊び!?(小ネタ)
ミサトのルノーのナンバーが「33‐10」
語呂でミ(3)サ(3)ト(10)
(作者の遊びと思われます)
フランス好き(トリコロール各色への象徴)
ルノーというフランスメーカーの車というところも面白い点。
(それとも日産がスポンサー!?)
アニメの制作者にはフランス文化に傾倒している人達が非常に多い。フランスもバンドデシネなど独自のマンガ文化があり日本のアニメやマンガなども非常に受け入れられている背景があるのかもしれません。
それと、どうしても気になってしまうのが、フランス国旗、いわゆるトリコロールの色、赤・青・白。
ヱヴァンゲリヲンに限らず、「式日(しきじつ)」という実写映画(庵野秀明監督作品)にも、この三色が効果的に使用されています。
なんとなくのイメージですが、赤=情熱・理想、青=幸せ、白=平和、無垢 というものが象徴されているような気がします。
ちなみに、フランス国旗のトリコロールの各色の意味は以下の通り
青:自由 (第三階級=平民)
白:平等 (第一階級=聖職者)
赤:友愛 (第二階級=貴族)
プラグスーツが、ファーストチルドレン=綾波レイ(白)、セカンドチルドレン=惣流アスカ(赤)、サードチルドレン=碇シンジ(青)という第一~第三も、フランスのトリコロールから、とられているのでしょう。
わざとらしい説明にしない工夫
アニメに限らず、最近の映画では、セリフを使って状況を視聴者に説明するタイプのものがあります。
小説や漫画で見る分には違和感が無くても、実際の人が、それを口にすると、「いやいや、そんな人はいないし、明らかに場面を説明しちゃってるよ」というのを感じてしまいます。
そんな映画が多くなっていて、辟易 ぎみ。
このシーンの場合、主人公のシンジがミサトに質問し、それにミサトが答えるという形で、何が起こっているのか、状況そしてストーリー、世界観を観客にセリフで知らせるという形が、それにあたります。
しかし、ここで何もシンジがミサトに聞かない、質問しないということで、逆に、違和感を感じさせ、その不自然さを感じたミサトが説明をするという、単純にセリフで説明するという手法に流れないというところが非常に上手いやり方だと思います。
そして、その何も聞かない・質問しないということで、シンジが何かトラウマを抱えていることも、納得させるシーンになっています。
NERV(ネルフ)本部、使徒の状況を見つめるゲンドウと冬月のシーン
「第4の使徒、たいした自己復元能力だな?」
「単独で完結している純完全生物だ、当然だよ」
「生命の実を食べた者達か」
「ああ、知恵の実を食べた我々を亡ぼすための存在だ」
使徒とは何者か?その2
そして、人間は知恵の実を食べた者達。
知恵の実とは、アダムとエヴァが食べた禁断の果実のことです。

NERV(ネルフ)に到着したミサトとシンジ、ジオフロントへ降りていくシーン
「特務機関NERV( ネルフ)?」
「そう、国連直属の非公開組織」
NERV(ネルフ)とは?
国連の非公開組織で、seele(ゼーレ)という何やら怪しい組織の下部組織にあたる。NERV(ネルフ)のエンブレム、スローガン
NERV(ネルフ):ドイツ語 で「神経」という意味イチジクの葉:マークに描かれているのはイチジクの葉
キリスト教では、禁断の実を食べたアダムとエヴァが恥ずかしさを覚え、局部を隠すために使った葉。
赤毛のアンで、アンが最後に述べる言葉です。
「訳:神は天にあり、世は全て良し」
ジブリの高畑勲監督が赤毛のアンをアニメ化していましたが、それに対する庵野監督のオマージュなのでしょうか?

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