最近、「 甘酒 」がすごい人気ですね。
冷やして飲むタイプの商品が、店頭に並ぶようになりました。
以前は、冬になると、お汁粉と並んで店頭に姿を現す感じでした。
それ以外では、春(ひな祭り)に白ざけの代わりに飲むくらいで・・・
夏や秋のイメージは全くありませんでしたよね。
以前は、飲んだ事はもちろん、見たこともありません。
今の、この状況に少し違和感があります(笑)
そんな甘酒、実は「 夏の飲み物 」で、俳句の 「 夏の季語 」にもなっているんです。
江戸時代では、甘酒は夏バテ防止、暑気払いに よく飲まれていたということは、
ここ数年、テレビなどでも取り上げられているから、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
それにしても、俳句の夏の季語になるということは・・・
逆に、冬の寒い時期、甘酒を暖めて飲む という飲み方を、江戸時代の人はしなかったんでしょうか?
少し気になったので調べてみました。
江戸では甘酒は、夏以外は飲まないのか?
結論から言います・・・
季節に応じて、温めたり、冷やしたりして飲まれたようです。
「 甘酒売り 」という行商まであり、甘酒を売るお店が閉まった後でも、一杯八文
(現在の価格で80円~160円程度)で売って歩いたとの事。
その売り声にも、特徴があります。
「 三国一の富士の甘酒、甘酒やぁ、甘酒ぇ 」
富士の甘酒?なんか変わった売り声ですよね?
実は、何故、富士かというと、富士山は「一夜」で出来たという言い伝えがあり
一夜酒(甘酒)にかけているそうです。
こういう洒落(シャレ)、江戸時代を感じさせますね!
ちなみに、お汁粉も「 汁粉売り 」という行商がいて、こちらも年中売られていたようです。
こういった行商、現代の「コンビニ」 の代わりといったところでしょうか。
夜に、甘いものを欲しがる スイーツ女子・男子は、江戸時代にも健在だったということですね(笑)
いつの間にか夏の風物詩
さて、甘酒が 「 夏の風物詩 」 だったという根拠は、「 守貞謾稿(もりさだ まんこう) 」という
喜田川守貞(きたがわ もりさだ)によってまとめられた、文献からきているようです。
この守貞謾稿に、甘酒売りについて書かれていて、夏になると多くの行商が市中を売り歩いた
とあります。
なぜ、夏には甘酒売りが増えたのか?
それは、もちろん、売上げが上がるからですよね(笑)
つまり、江戸時代の人達は、甘酒が夏バテに効果テキメン! ということを知っていたんですね。
栄養学なんてまだ無いのに、江戸時代の人達の知恵には、いつも驚かされます。
ちなみに、甘酒の栄養と夏バテについては、別の投稿があります。そちらも、よければ見てみてください。
⇒「甘酒の栄養」 本当に 「夏バテ」 に効果があるのか?
守貞謾稿には、当時の甘酒屋の姿が、絵でも描かれていて、その特徴が、よく分かります。
■ 守貞謾稿 4巻「生業」より甘酒屋
こういう姿の行商が、夏には大勢街中を歩いていて、売り声をあげていたんですね。
夏の風物詩となり、やがて季語になっていく・・・
自然な流れだったのでしょうね。
甘酒は「夏」の季語、どんな俳句があるのか?
では、江戸時代に、甘酒をテーマとした俳句に、どんなものがあるのか?
これも調べてみました、俳句はど素人なんですが・・・(笑)
- あま酒 の 地 獄もちかし 箱根山 与謝蕪村(江戸中期)
以上・・・
散々探して、たった一句・・・
「 季語 」なのに・・・?
甘酒の別名
・・・と思ったら、甘酒 には、別の字、別の呼び名 があることが分かりました(笑)
以下の二つがそれです。
-
- 醴 (あまざけ)
- 一夜酒 (ひとよざけ)
これらを使って、改めて、調べてみると・・・・
- 寒菊や 醴 造る 窓の前 松尾芭蕉(江戸前期)
- 一夜酒 隣の子迄 来たりけり 小林一茶(江戸中期)
ここに挙げたのは一例で、これ以外にも、まだあります。
芭蕉や一茶、蕪村といった江戸時代を代表する有名な俳人が、甘酒の俳句を残しています。
やはり、甘酒は、江戸時代、しっかり定着していたんですね。
ただ、新たに気になる事が・・・(笑)
芭蕉の句に出てくる、寒菊は、冬に咲く花 ですよね。
醴(あまざけ)は、夏の季語 だったはず・・・・??
当時、冬に咲く花を、夏に咲かせる技術はさすがに無いでしょうから、
おそらく、江戸時代前半、甘酒はまだ「夏の季語」ではなかった と思われます。
江戸の中期以降、夏の風物詩となり、俳句の季語になったのではないかと思われます。
まとめ
江戸時代に「甘酒」が庶民に愛され、そして「甘酒売り」も愛されていたということが
よく分かりますよね。
一年中どこに行っても買えて、特に夏は向こうから売りにきてくれる。
ある意味、現代より恵まれている環境だったのかもしれません(笑)
最後に、今回の内容を、簡単にまとめました。
- 甘酒は夏の季語だが、夏だけでなく年中売られていた
- 甘酒売りという行商 があり、夏になると増えた
- 甘酒売りの、売り声はシャレていて夏の風物詩に
- 江戸時代を代表する俳人が甘酒に関する句を残している
- 甘酒は、別名がある 醴(あまざけ)、一夜酒(ひとよざけ)
- 守貞漫稿(もりさだまんこう)という江戸の文献に、甘酒売りについて書かれている
あとがき・・・
甘酒、ちょっと気になって調べ始めてみたのですが、意外と奥が深いですね。
これを調べるきっかけとなったのは、去年の夏、友人とデパートの食料品売場に行った時でした。
そこに並ぶ、甘酒の種類の豊富さに驚き、自然と会話は甘酒の話題になり・・・
やがて、次の疑問が・・・
「江戸時代の人が、夏には飲む事は分かったけど、逆に冬ってどうしてたんだろう??」
その後、忘れていたんですが、最近になって急に思い出し、なんだかいてもたってもいられず
調べ始めました。
どうも、「一度気になると、知りたくて仕方ない病」にかかっているようです(笑)
甘酒に関しては、歴史も古いようなので、それについても調べてみたいんですけど・・・
なんだか、寝れなくなりそうです・・・(笑)
コメント
8文では値段が高すぎて飲めないと感じます。
4文の間違いではないでしょうか。
ろくざさん、コメントありがとうございます。
当然、その時々で値段は変わると思いますが、一応、『守貞謹稿』に記載されている内容では一椀八文と記載がされていますので、間違いではありません。